機密情報の漏洩、銀行口座の流出、個人情報の盗難などは、サイバー攻撃による被害のほんの一部に過ぎません。しかし、その事実を知って絶望する必要はありません。サイバー攻撃から身を守る方法は存在しますし、何が起きているのかを知ることで、結果として安全な生活を送ることに繋がるからです。そこで今回は、サイバー攻撃の仕組みや、サイバー犯罪の種類、サイバー攻撃の日本における事例、そして自分自身を守る方法について見ていきましょう。
サイバー攻撃とは、ネットワークを通じて、サーバーやパソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末を意図的に狙い、破壊したり、データを盗んだり、改ざんしたりする行為のことを指します。
サイバー攻撃は、ハッカーのような個人によって行われることもあれば、組織によって行われる大規模なケースもあり、その場合、人や組織、あるいは国が標的になります。
政府機関や重要インフラのシステムに攻撃を仕掛け、人々の生活や社会経済活動に深刻な影響を与える「サイバーテロ」や、時間や手段、方法を問わず、特異的かつ継続的に攻撃を行い、最終的に重要な情報を入手する「標的型サイバー攻撃」は、年々巧妙化しており、大きな脅威になっているサイバー攻撃と言われています。
サイバー攻撃には数え切れないほどの手口がありますが、具体的な事例を紹介する前に、どのように行われるかを見てみましょう。サイバー攻撃は大きく分けて以下の4種類に分類されます。
これは通常、破壊的でないサイバー攻撃です。ハッカーや悪意のある第三者は自分たちの活動を隠し、ターゲットにその事実が知られないようにします。基本的には、機密情報を収集または窃取するために受動的攻撃が仕掛けられます。
能動的攻撃は一般的に、個人のデバイス、ネットワーク、あるいはインフラ全体を混乱させたり破壊したりすることを目的としています。個人だけでなく、組織や国が動的攻撃の標的になる可能性も大いにあります。
内部攻撃(インサイダー攻撃)は、その名前の通り、標的とするシステムへのアクセスをすでに許可されている人物や組織によって実行されます。内部攻撃によるインサイダー脅威は、近年急速に高まっています。
外部攻撃(アウトサイダー攻撃)は、攻撃対象とって部外者である人物や組織によって実行されるのが一般的です。攻撃を仕掛ける人物や組織には、個人が行うものから国家が行うものまでさまざまなケースがあります。
ここからは、サイバー攻撃の内部を見てみましょう。最も一般的なサイバー攻撃の被害事例や手口を紹介します。
DDoS(分散型サービス拒否)攻撃とは、オンライントラフィックを集中させることによって、サービス、サーバー、またはネットワークを妨害するように設計されたインターネット上のサイバー攻撃です。感染したコンピュータのネットワークを使用してターゲットを圧倒するため、サービスは正規のトラフィックを一切受け付けなくなります。この種の攻撃は、サービスを遅くしたり、完全に停止させたりする可能性があります。日本では、2015年に東京五輪組織委員会のホームページがDDoS攻撃を受け、約12時間にわたって閲覧ができなくなった事件がありました。
マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアの総称で、ターゲットに危害を加えるか、または他の方法で利用するように設計されたものです。マルウェアには、被害者の情報を密かに収集したり、迷惑な広告を表示したりするアドウェアから、ユーザーのデータを暗号化して身代金を要求するランサムウェア攻撃まで、さまざまなものがあります。2015年に発生した日本年金機構の情報漏洩は、マルウェアの感染が原因だったということがわかっています。また、2020年に株式会社カプコンがランサムウェアによるサイバー攻撃を受けて、財務情報および個人情報が流出した事件は記憶に新しいでしょう。
ソーシャルエンジニアリング攻撃は、ユーザーをだまして、機密データの開示、マルウェアのインストール、加害者への送金をさせるものです。サイバー犯罪者は通常、銀行関係者やウェブサイトなど、信頼できる人物になりすましてウェブサイトやメールを偽装し、自分の利益に反する行為を実行させようと試みます。
中間者攻撃では、犯罪者はユーザーのコンピュータと、アプリ、ウェブサイト、他のユーザーといった受信者との間の通信を傍受します。そして、通信を操作して、ターゲットのデータを入手することができます。
ゼロデイ攻撃は、パッチがリリースされる前のソフトウェアやネットワークの脆弱性を狙ったサイバー攻撃です。最近の事例では、2019年に三菱電機がこのタイプのサイバー攻撃を受け、最大8122人の情報が流出した可能性があると報道されました。
クロスサイトスクリプティングは、信頼できるWebサイトに悪意のあるスクリプトを挿入し、ユーザーの個人情報を収集するサイバー攻撃です。通常、ターゲットがウェブサイトのログインフィールドに入力した情報を記録することによって行われます。
SQLインジェクションは、悪意のあるSQLコードを実行可能なものとして解釈するよう、ウェブサイトをだまし討ちするサイバー攻撃です。こうすることで、犯人は、本来なら機密であるはずの情報をサイトから獲得することができるのです。
上記で紹介したサイバー犯罪の事例が示すように、サイバー攻撃は甚大な被害をもたらす可能性があります。サイバー脅威はインターネットの隅々にまで潜んでいるように見えますが、犯行を未然に防いで自分自身を守るためにできる対策もあります。